なんとなく思い出したのですけど、卒論とかって何やってたっけかなぁ。
確かメシアの量子論に出てきていた生成消滅演算子を使って、何かの式を計算したような気がします。今になって考えてもみればあまり意味のないことだったような気が。まぁ、卒論なんてそんなものなのかなぁ。
そもそも、担当教授のことが実は正体がよくわかってないんです。
それなりに名前を知られた人だったらしいことと、少なくともうちの大学から院生を取ったのが私が最初だということはわかっています。
前の年に外部からの院生を受け入れていたんですけどね。
思えば、学部の時の量子論の講義ではほとんどまともにシュレーディンガー方程式は扱わなかったような気がします。ハイゼンベルクの行列表現をただひたすらやっていたんですよね。しかも、時間発展部分は分離してしまっていたから、静的状態を記述するために、ともかく線形空間とか群論とか群の表現とかをやっていました。
まぁ、ハイゼンベルクの正準形式からさらに生成消滅演算子まで進んだのですから、ある意味、場の量子論まで踏み込んだ講義だったのですね。
なぜハイゼンベルクの方程式か。
噂によると、担当教授はかつてマックスプランク研究所でハイゼンベルクその人から教授されていたということで、その後パリの大学でも教鞭を取っていたらしいです。
だから、ドイツ語もフランス語も堪能(らしい)。というか、院生のときにロシア語の教科書を貸してくれたことから、ロシア語もできたということですね。
でも、場の量子論を研究していたということ以外は全然知らないんです。
ううむ。
量子論の基本方程式はシュレーディンガー方程式の方が有名ですけど、ハイゼンベルクの行列方程式はそれと等価な内容を別の表現として表したものなんですね。(ああ、不用意に「表現」とか言うとおこられてしまうな。)
量子力学(古典量子論ね)におけるあらゆる状態量は、無限次元のヒルベルト空間のベクトルで表わされ、観測量はそのベクトルに対して作用する群(実体は環だっけ?)の固有値として表現されるのですね。
その群の性質を持つ行列を実際に書き出したものが、その群の表現というわけで。
(このあたり、正確な言い方ではないです。もう記憶も錆びついてるからなぁ。)
ある現象に限った場合、状態を表すベクトルは単純な形になります。例えばスピン1/2の量子のスピン状態量を表すベクトルは2次元で、ふたつの基底の任意の線形結合であらわされるんだったよな。
えっと、そのベクトルに作用するスピン演算子の表現のひとつがパウリ行列だったんじゃなかったかな?
えっと、ここで言うところのベクトルというのは高校とかで使ういわゆるベクトルよりも数学的に抽象化されたものです。
えっと、体Kの任意の元a,bと集合Vの任意の元x,yに対して演算axとx+yががVの元になるように定義しておいたときに、次の条件を満す空でない集合を体K上のベクトル空間Vという。
(1) x+y=y+x for all x,y ∈ V
(2) (x+y)+z=x+(y+z) for all x,y,z ∈ V
(3) x+0=x となる0 ∈ Vが存在する。
(4) 任意のx ∈ Vに対し、x+x'=0となるx'∈ Vが存在する。
(5) a(x+y)=ax+ay for all a ∈ K, all x,y ∈ V
(6) (a+b)x=ax+by for all a,b ∈ K, all x ∈ V
(7) a(bx)=(ab)x for every a,b ∈ K, all x ∈ V
(8) lx=x for all ∈ V となる 1∈ Kが存在する。
だったっけ?
なんか不正確な気がする。
体は端的に言ってしまえば、実数と複素数と四元数。(大雑把すぎ)
こうして定義しておくと、ベクトル空間Vの任意の元x,yと任意の体Kの元a,bに対して、ax+byは常にVの元となるんですよね。
この性質を利用すると、線形微分方程式の解の集合もベクトル空間となるので、それに対してax+byが常に解になるということも導けます。
(厳密には証明が必要ね。この性質があるから、波の重ね合わせとかができて、フーリエ変換とかフーリエ級数が説明できて、全ての波が正弦波の和で表されることになるのですね。(ただし、波動方程式が線形な場合のみ))
ざくっと言ってしまうと、ハイゼンベルクの方程式のように、状態量がベクトルで表せるというのは、線形方程式であるシュレーディンガー方程式の解がベクトル空間の元となっているからなんですね。
はぁ、はぁ。
シュレーディンガー方程式は時空に対する共変性を持ってないから、相対論的力学を表すことができないのですが、ちょっと工夫することでできるディラック方程式は時空変換に対して共変になるので、特殊相対性理論の範疇の量子論の方程式になります。
この解を表すのにディラックのガンマ行列を使うんじゃなかったけかな?
パウリ行列は2次元だったけど、ガンマ行列は4次元だったはず。(いいかげんな記憶)
このガンマ行列に対する表現を使うのに、クリフォード代数が必要と。
ここで言うところの代数というのは環と同じ意味で、ベクトル空間の元に作用したときの固有値として物理量を表現する。
院ではひたすらクリフォード代数について調べていたなぁ。
結局、修論で何をテーマにしたか、さっぱり忘れてしまっているけど。
私のあとに続いた院生はもうちょっとマシな研究をやっていたみたいですが、私は結局わかりきったことをまとめなおしただけだったような気がするなぁ。
あ、上の公理とか説明は絶対に引用しないこと。
かなりいいかげんだから ^^;;;
まぁ、ちょうどタイムリーにヒッグス粒子の存在関連でノーベル賞が決まりましたけど、その理論の一番根っこにあるのが上の議論。
根っこすぎて、上は果てしなく遠いですけど。
クリフォード行列でせこせこやっているときは、まだ一般相対性理論を量子化する決め手はなかったんですよね。今はその候補が超弦理論となっていますけど、超弦はもっと色々なことを説明するみたいですね。
ふう。
そもそも、院のときもまともにペンローズダイアグラムとか経路積分とかを勉強しなかったしなぁ。(そこも根っこの部分) ゼミで英語のテキストを読み進むというのがあったんですけど、そのときに担当教授に勧められたロシア語の原文に当たろうとして砕けたのでした。(結局いっしょにゼミを受けていた先輩に、英語版のコピーをもらったのでした ^^;;;)