量子力学の基礎方程式というとシュレーディンガー方程式なんですが。。。
下調べしようとWikipediaを見てみたら、文章がむちゃくちゃでやんの。
注意書きまで入っていたし。英語からの翻訳らしいのですけど、確かに誤訳とかむちゃくちゃ多いし、というか全然用語とか合ってないし、これ書いた人、全然知識ない人だな。。。
まぁ、シュレーディンガー方程式に入るためには、まずはアインシュタインの光量子仮説までたどりつかないといけないんですよね。
波長が$\nu$の電磁波が、例えば水素原子などに当たると、水素原子の持つエネルギーが不連続に変わることが実験で確かめられていました。これは、内側の軌道を回る電子が、電磁場のエネルギーを吸収して別の軌道に遷移することが原因だとされています。ところが、実験ではこの軌道の遷移によるエネルギーの上昇が連続的でないことが確認されていたんですね。
アインシュタインは、この不連続性は電磁波が粒子としてふるまっていて、そのせいで電子のエネルギー準位が上がると考えました。
それまで電磁波(=光)は波と考えられていました。
というか、アインシュタインの特殊相対性理論そのものが、マックスウェル方程式から導かれる波としてふるまう光とニュートン力学を結合したものでした。それなのに、それと一見矛盾する仮説をたてたのです。
電磁波のエネルギー$E$は電磁波の波長$\nu$を使って、$$E=h\nu$$とあらわされることを示しました。
アインシュタインはこの光量子仮説でノーベル賞を受賞しています。
ここ重要。
アインシュタインは相対論でノーベル賞を受賞したわけではありません。
量子力学の元となるアイディアとなった、光を粒子としてとらえるという光量子仮説でノーベル賞を受賞したのです。
でも、もちろん、光はマックスウェルの方程式に従うことも確認されています。
ここから、小さな粒子の世界では、粒子(=量子)は波と粒子の両方の性質を持っている、と考えないと矛盾することが確認されてきたのです。
話をすっとばします。
相対論効果を考えない場合、物体(点)の動きはニュートンの運動方程式で表すことができます。
$$ F=\frac{\mathrm{d}^2x}{\mathrm{d}t^2}$$
でも、これはちょっと考え方を変えると、エネルギーについて考慮しても成り立つ方程式を立てることができることがわかっています。運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの差をラグランジュアンと呼んで、それについて成り立つ方程式を立てるのです。ラグランジュアンは運動量と位置の関数として表すことができますが、実はもっと一般化した変数を使っても成立する方程式で、数学的にあつかいやすいものなのでした。
この形式の方程式を扱う力学を解析力学と呼びます。
ラグランジュ方程式と双璧を成す方程式にハミルトンの正準方程式というのがあります。ここではハミルトニアンというのがでてきますが、これはラグランジュアンをさらに一般化したもので、運動方程式が二階の微分方程式なのに対して、一階の微分方程式の組として表すことができるようになっています。
$$ H(x,p)=\frac{p^2}{2m}+V(x) $$
ここでミソなのですが、実は量子の世界でもこのハミルトンの正準方程式と似た関係式が成り立つことが実験結果と式の展開を合わせることで確認することができます。
形式的には、ハミルトニアン$H$をエルミート演算子$\hat{H}$に置き換え、運動量$p^2$を$-\hbar^2\frac{\partial^2}{\partial x^2}$と置き換えると、$$ \hat{H}=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2}{\partial x^2}+V$$となります。
これらは演算子でしかないので、これだけでは方程式として成立しません。
そこで、関数$\phi$を導入して、$$ \hat{H}\phi=-\frac{\hbar^2}{2m}\frac{\partial^2 \phi}{\partial x^2}+V\phi$$
これがいわゆるところのシュレーディンガー方程式になります。
この式自体は、$\phi$が波の形をしている、つまり$\phi=ae^{i(kx-\omega t)}$の形にあらわされる、ということと、アインシュタインの$E=h\nu$から導き出すことができます。
ちなみに、波というと普通サインかコサインであらわされる、と思いますけど、一般的には複素数に関して成り立つオイラーの式$e^{i\theta}=\cos \theta +i\sin \theta$であることと、波が時間とともに進むということからこの一般的な形となります。
ということで、理屈が逆になってしまいますが、シュレーディンガー方程式は波動方程式となっています。
この$\phi$の二乗からが存在確率となっていると考えたりしますね。あと、$\phi$にさっきの運動量のようにして物理量を表す演算子を作って作用させることで、その物理量の期待値を出すこともできます。
こうして、量子の世界の現象が定式化されていくのですね。
おっと、そこで問題。
アインシュタインの特殊相対性理論では時間と空間はまぜこぜになってしまい、同じ土俵で議論しないといけないことになっています。
でも、見てもわかるようにシュレーディンガー方程式では時間については一階の微分で、空間に関しては二階の微分となっています。
それで、特殊相対性理論的に共変な形に持っていくためにはシュレーディンガー方程式に手を入れないといけないのでした。
それで出てくるのがディラック方程式とクライン-ゴルドン方程式と呼ばれるものです。前者はスピン1/2の量子を、後者はスピン0の量子を記述するようになっています。
それで、量子力学は特殊相対性理論を取り込むことができるのですが、そこからが長いのですね。
特殊ができるなら一般も、と考えるわけですが、それが一筋縄ではいかないわけで。
一般相対性理論と両立する量子力学の定式化はいまだ成されていません。